【結果報告】果たしてシックスパックは手に入ったのか
読書

第159回直木賞受賞の島本理生『ファーストラヴ』を読んでみた

新幹線で三時間くらいで一気に読み終えました。月並みの煽り文句ですが、実際にわたしの体験談であり、事実それほど面白かったのだから、しょうがないです。

あらすじ

夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。
彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。
環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。
環菜の美貌も相まって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。
なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?

臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、取材を始める。
自らも夫とその弟との微妙な関係に悩まされながら、環菜やその周辺の人々と面会を続ける由紀。
そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは?
以上、アマゾンより引用。

動揺を見過ごさないで


まずはハードカバーの表紙について。
若さと艶やかさの両者が共存するその表情の持ち主は目隠しのためにそのすべてを読み取ることはできません。
しかし、まだ成熟しきっていない少女のものであると本能的に判断できます。この本の表紙を一目みて、多少なりとも誰もが動揺することでしょう。
この小説は、普段私たちが普通に暮らしている限りは見ることのないタブーに踏み込んでいるのだと直感します。
この表紙をみたときに覚える動揺をどうか、見過ごさないでください。そのタブーに踏み込むことを恐れないでください。ぜひ、本書を開いて、その動揺の正体を確かめてほしいのです。

秘密への中毒性

動機を見つけてほしい、そんな少女のノンフィクションを描くために主人公は少女の関係者に話を聞いて回ります。
私は本作を読み進めるうちに、ページの間からスゥーという音と立てながら、紫の煙が漏れだしているような錯覚に陥りました。
この紫煙がただの煙ではないことは、本書を読みたいとに思った時点で覚悟していたくせに、という声が聞こえてきそうでした。
紫煙は少女と主人公が抱える秘密の答えを知りたいという中毒性を持っています。その秘密を知ることの好奇心を刺激された読者は、ページをめくる手が止まらないのです。ぜひあなたにもこのような感覚を味わって下さい。

人の心は壊れていく

父親を刺殺した女子大生の殺人の動機が明らかになっていくよりも、主人公の過去のほうが、よっぽど気になりました。
またその女子大生の過去も、もう少しドロッとした結果を望んでいた自分がおり、少々拍子抜けしたかな、と思った私はすぐにはっとしました。 私のそんな安易な感想は、本当はこうやって人の心は壊れていくのだ、という理解へと変貌したのです。
私は物語をひも解く好奇心を満たしつつ、己の無神経さを戒められた気がしました。

あなたも本書から立ち上る紫煙の虜となって、彼女たちの秘密に近づいてみてください。