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読書

おすすめする感動小説 4選

はじめに 本に対する読者の権利とは

読書は限りなく自由な行為です。

私達は自らの意思でページを開き、文字を認識し、想像し、感じ、考えることができます。いつ読書を初めてもよいし、いつ終わらせてもよい。そして何を感じてもよいし、何も感じなくても良い。何を考えたらだめということは全くない。それは全ての読者が持つ権利です

今回は私クロが、読者を夢中にさせるブラックホールのような、引力のように抗えない魅力をもち、読者を感動の渦に巻き込む小説を4つご紹介します。

サラバ!

この本を読んだ後は、ちょっとした地震に見舞われたような感覚に陥ります。これは本の領分を越えている、なにか本の姿を借りた怪物なのではないか、そんな疑いすらもってしまうほどの衝撃をあなたに与えてくれることでしょう。

著者である西 加奈子さんは、本作で第152回直木賞を受賞しました。また、本作は2015年本屋大賞で第2位にランクインしています。

心を揺さぶられてほしい。私が本作をお勧めする理由は、これに尽きます。あなたの感性もろとも、この本にがっぷりともっていかれてほしい、そう思うのです。
この物語は信念の物語です。登場人物は、みなそれぞれの信念を求め、導き、迷い、傷つき、愛します。

はじめのうち読者は、主人公の歩(あゆむ)とその一家の悲喜交々を端からみているだけの傍観者に過ぎません。しかし気が付いてみると、この物語がもつ引力が、読者をその傍観者という立場からベリベリと引き剥がし、私たちを彼らと同じ世界線に吸い込みます。

その引力の中心にいるのは、歩の姉です。奇行を繰り返し乱暴な姉に、歩はその生活の浮き沈みを握られます。それと同様に私の読書の主導権すら彼女に握られてしまう、それほどの存在感をこの姉に感じました。全編を通して、私達は登場人物たちがおりなす感情と信念の竜巻に、否応なしに向き合うことを強いられるのです。

ぜひ皆さんもこの本を手に取ってそんな感覚を味わって頂きたい。そして己の信念について考えるきっかけを持ってください。

船に乗れ!

これは私が高校生の頃に読んだ小説です。しかし私が社会人になった今でも、ここまで残酷で美しい青春小説を他に知りません。

ストーリーは、音大受験に失敗した主人公の津島 サトルが、しかたなく入学した三流音楽高校のオーケストラで、様々で出合いを経て成長する青春物語です。全部で3巻になります。自分の音楽性にプライドを持っているサトルは、同級生や先生との出会いを経て様々なことを学び、感じながら成長していきます。

サトルはヴァイオリンを弾く美少女 、南 枝里子に一目ぼれし、付き合うことになります。しかし、夏休みにサトルがドイツに音楽留学にいくと、南枝里子は情緒不安定に陥ってしまい、二人はまさかの展開に。それはちょうど本作の2巻目「独奏」で語られるのですが、あなたの心に永遠に刻み付けられる2巻となること間違いありません。

クラシック音楽を全く知らない方でも、それこそ何気なく音を聴くようにすんなりと読み進めることができるので、全く心配ありません。また、作中でサトルが受ける哲学の授業では、哲学者ニーチェの思想にも触れる場面がありますが、それらがこの物語により一層の深みを与えています。

サトルはその若さゆえに人を愛し傷つけられ、またサトル自身も人を傷つけます。そんな若く多感なサトルと一緒に、この鋭い稲妻のような青春を一気に駆け抜けてください。

余談ですが、この小説の著者である藤谷治さんが、どこかの駅で自前のチェロを盗まれたというエピソードがなぜか私の印象に残っています(後日ちゃんと手元に返ってきたそうな)。

蒼穹の昴

時は清朝末期、列強の植民地化の中で激震の歴史を迎えた中国の、史実をもとにした物語です。

宦官(かんがん)というものをご存知でしょうか。宦官とは男でも女でもない存在。つまりは自分の男性器を切り落とし、身を清めてから皇帝に仕えていた人たちのこと。

主人公のチュンルーは、人畜の糞拾いとして田舎でみじめな生活を送っていました。ある日天命を受けたチュンルーはそれを信じ、自分の運命を切り開くために自ら宦官となる決意をします。そしてついには西太后の右腕として全中華をその手中に収めるまでの物語です。

ハードカバーで上下巻、文庫本で5巻という長編物であり、舞台も中国ということで漢字も多いです。しかし、一度読み始めるとページをめくる手は最後まで止まらなくなることでしょう。

それは列強国に分断されようとする激動の中華を舞台に、主人公のチュンルー以外にも多くの魅力あふれる人物が登場する為です。悪女として名高い西太后が、本作では中華の命運を一身に背負う1人の人間味ある女性として描かれている点も、この物語を非常に興味深くしています。

中国の歴史について全く知らない方でも、自分の運命を必死に生きようとする登場人物たちの生き様を一たび読んでしまえば、すぐにこの物語の虜になります。

本作の著者である浅田次郎さんは、高倉健さん主演で映画化された「鉄道員(ぽっぽや)」も執筆しています。「平成の泣かせ屋」浅田次郎さんが描くチュンルーの運命をぜひ見届けてください。

蒲生亭事件

著者である宮部美みゆきさんの作品の中でも、本作は異彩を放っています。なぜならこの物語は、主人公の尾崎孝史が予備校受験の前夜、2.26事件の真っただ中へタイムスリップするところから幕を開けるのですから。

2.26事件といえば、1936年に陸軍青年将校らが起こした日本のクーデター未遂事件です。舞台はその2.26事件の鼻先、陸軍予備役大将の蒲生憲之という大物軍人の御屋敷。22.6事件の当日に蒲生憲之は自決しますが、そこには他殺の可能性が見え隠れしており……。

本作は1997年の第18回日本SF大賞を受賞していますが、SF要素の他にも、歴史要素やミステリ要素ありというまさに異色の小説です。それらの要素を完全に調和させて物語を紡ぐ宮部みゆきさんの書き筋はさすが。そして我ら読者は、彼女の手のひらで心地よく転がされてしまうこと請け合いです。

2.26事件など近代の日本史が好きな方、ミステリが好きな方、はたまた摩訶不思議SFが好みの方まで、どなたにも勧められる万能薬のような一冊です。

まとめ

すさまじい魅力を持つ4つの小説をご紹介しました。どのタイトルも心にかなり響く内容であるため、適度に休憩をはさみながら、ぜひ全てを読了してみてください。